デフレとインフレ

日本人には経済オンチが多い

今の学校教育では、お金や経済のことを勉強する機会は、ほとんど与えられていません。

日本人は、財政政策、金融政策に関する正しい情報を得る機会が極端に少ないのです。

そのために、誤った情報に流されてしまいます。

  • デフレはモノの値段が安くなるのだから悪くない。
  • デフレだろうと増税は必要なものだ。
  • インフレは危険である。

『デフレと円高の何が「悪」か(上念司)』

私は、本書『デフレと円高の何が「悪」か(上念司)』を読み、真実を知ることができました。

デフレとは何か、ハイパーインフレはどうしたら起こるのか、日本はどうすれば良いか。

まずは、お金を中心に、日本の状況をきちんと理解することが大事ですね。

本記事では、本書『デフレと円高の何が「悪」か(上念司)』の内容を頼りに、デフレやインフレをテーマに書いていきたいと思います。

デフレは悪

「良いデフレなど存在しない!」と上念司氏は断言しています。

では、デフレはどんなものか、本書を頼りに詳しく見ていきましょう。

デフレの定義

IMFや内閣府はデフレを「物価下落が2年以上継続している状態」と定義しています。

2年以上ですから、特売セールなどの一時的な値下げはデフレではありません。

デフレとは、モノの全体の価格がこの先も下がり続けるという期待が世の中を支配している状態を指します。

今モノを買うよりも先送りした方が安くなりますので、人々は買い物を控えます。

結果、モノが売れなくなります。

デフレの原因

デフレの原因は、世の中のモノとお金のバランスが崩れて、お金不足の状態が放置されることにあります。

だから、お金を刷って、モノとお金のバランスを元に戻せば、お金不足の状態は解消されます。

デフレの悪影響

モノの量に比較してお金の量が極端に不足すると、人々はモノよりお金ばかり欲しがってなかなかモノを欲しがらなくなります。

モノが全然売れなくなりますので、お店の売上は減少していき、いずれ倒産してしまいます。

従業員の給料は下がり、採用は控えられてしまい、最悪の場合は失業してしまいます。

デフレの恩恵を受ける人

収入が下がりにくい人、倒産の危険が少ない人、リストラされにくい人です。

つまり、公務員(労働人口の約7%)と大企業の正社員(労働人口の約10%)の皆さんです。

私を含め、それ以外の人にとって、デフレは悪でしかありません。

デフレ下での増税は最悪

今の日本はそんな悪いデフレの中にいますが、さらに、政府と財務省は増税しようと企んでいます。

税収について

税収とはどのように決まるでしょうか。

税収は以下の簡単な掛け算で決まります。

税収=名目GDP×税率(理解しやすくするために税収弾性値は省略)

名目GDPとは国内で作られたあらゆるモノの売上を示す便利な数字です。

税収をあげる方法

上記の数式から、税収を上げる方法は2つだけです。

  • 名目GDPを上げる。
  • 税率を上げる。

デフレの原因

デフレの原因は、世の中のモノとお金のバランスが崩れて、お金不足の状態が放置されることにあります。

デフレ下で増税することの意味

デフレ下では、今モノを買うよりも先送りした方が安くなりますので、人々は買い物を控えます。

さらに、ここで増税したらどうなるかというと、モノの値段がさらに上がってしまうので、余計にモノが売れなくなります。

デフレ下での増税は、デフレを加速させるだけですね。

物価の変化を測る物差し

自分が普段買っているモノの値段が上がっても、それは物価が上がっているとは限りません。

そもそも物価は「生活実感」という曖昧な感情では決まりません。

世界各国の政府や中央銀行は、物価の変化を見るときに消費者物価指数(CPI)を重視しています。

日本のCPIは狂ってるかも?

日本の総務省が発表するCPIは0.86%~1.07%の上方バイアスがかかっているというレポートが第一生命研究所(2004年)から出ています。

海外の研究では、その上方バイアスがプラス1.8%というレポートも出ているそうです。

ニュースのCPIには注意せよ

消費者物価指数の対象商品と名称は、日本と海外で異なりますのでニュースを読むときは注意しましょう。

項目日本海外
総合指数CPICPI
生鮮食品を除く総合指数コアCPI使わないので無視
食料(種類を除く)およびエネルギーを除く総合指数コアコアCPIコアCPI

なぜ、このような分け方をするかというと、価格が乱高下する品目を統計に含めると、一時的な価格変動の影響を受けてしまうからです。

注意しなければいけないのは、日本と海外ではコアCPIの中身が異なることです。

実際に日本のニュースでコアCPIは「生鮮食品を除く総合指数」として2021年10月29日の記事でも書かれています。

ニュースの冒頭でコアCPIは0.1%上昇している、と書いておいて、文末でコアコアCPIは0.4%の減少でした、なんて書かれ方がされているので、ミスリードされないように気を付けなければいけません。

そして、日本でコアコアCPIの統計を取り始めたのは、2008年からです。

日本でハイパーインフレは絶対に起こらない

数%のインフレが起こると、すぐにハイパーインフレを想像する人がいますが、そもそも、ハイパーインフレとは何でしょうか。

ハイパーインフレーションの定義

月次50%の物価上昇です。

ハイパーインフレの事例

世界中を見渡しても3つだけだそうです。

  • 第一次世界大戦後のドイツ
  • 第二次世界大戦後のハンガリー
  • アフリカのジンバブエ

まずは、この事実を知らない人がほとんどではないでしょうか。

各国でハイパーインフレが起こった経緯

ドイツでは、第一次世界大戦後に多額の賠償金と、軍隊による生産設備の機能停止などによる、生産活動の停止が原因でした。

ハンガリーでは、第二次世界大戦の敗北と、ソ連による占領が原因でした。

ジンバブエでは、ムガベ大統領による無茶な政策により、農業技術者や外資系企業がいなくなり、生産力が著しく低下したことが原因でした。

ハイパーインフレの原因

上記の事例には共通点があります。

戦争や間違った政策による、生産設備の破壊や機能停止と、極端な生産量の低下です。

そんな極端なモノ不足の状態で、政府が大量の通貨を発行すると、ハイパーインフレになってしまうのです。

戦後、GHQ占領下の日本では?

第二次世界大戦に敗れた日本は、国富の4分の1を失い、生産水準も戦前の2~3割に落ち込み、終戦処理として巨額の財政出動が行われました。

1945年9月から1949年4月までの物価上昇率は、月率で4.9%、年率で59%でした。

あれだけ爆撃を受けて、そこらじゅう焼野原になっても、日本ではハイパーインフレになりませんでした。

日本ではハイパーインフレは絶対に起こらない

日本でハイパーインフレを発生させるためには、以下のような事が起きない限り不可能です。

  • 大規模な同時多発テロ
  • 日本本土が戦場になるような戦争
  • 日本が沈没するくらいの大地震

つまり、現代の日本においてハイパーインフレを心配するのは杞憂です。

デフレ脱却の方法

デフレの原因は、世の中のモノとお金のバランスが崩れて、お金不足の状態が放置されることにあります。

だから、お金を刷って、モノとお金のバランスを元に戻せば、お金不足の状態は解消されます。

実は日本でこれを実践し、デフレから脱却したという経験があります。

まずは、デフレに陥った経緯から、順を追ってみていきましょう。

1929年のニューヨーク証券取引所の株価大暴落

第一次世界大戦中に各国は金本位制を停止し、紙幣をたくさん発行して、武器や弾薬を作りました。

当然、世界中に紙幣がばら撒かれることになりました。

そして、戦争が終わり、各国は戦前の交換レートで金本位制に戻しました。

金本位制とは紙幣を発行する際に、その裏付けとなる金を保有しなければならないという制度です。

金本位制に戻すということは、戦争中に増やした紙幣を吸収し、紙幣の量を一気に減らすということです。

結果、モノとお金のバランスが崩れて、当然ながらデフレとなります。

これが、1929年のニューヨーク証券取引所の株価大暴落のきっかけです。

井上準之助

1930年1月11日、日本は井上準之助大蔵大臣のもと、金本位制に復帰します。

そして、世界と同じように昭和恐慌(デフレ経済)が訪れます。

高橋是清

昭和恐慌から日本を救ったスーパーヒーローが高橋是清です。

大蔵大臣に就任すると同時に、即座に金本位制からの離脱を宣言します。

為替相場はいち早く反応し、対ドルの為替レートは40%近くも円安となり、輸出産業が復活し、株価も一気に上昇しました。

さらに、高橋蔵相は日銀による国債の直接引き受けを実施します。

日銀が新たにお金を刷って国債を買い、日本経済に大量のお金を供給しました。

日本は2年で昭和恐慌(デフレ経済)から脱出します。

その後の歴史については、本書『デフレと円高の何が「悪」か(上念司)』を参照ください。

デフレを抜け出す方法

現在の日本はデフレが30年続いています。

これを抜け出すには、高橋是清と同じことを、今の政府が実行すれば良いのです。

  • インフレターゲットを決めて日銀にコミットさせる
  • 国家戦略に基づき積極的な財政政策を実行し、財源は国債で日銀に引き受けさせる
  • そして減税する

こんなとこですね。