令和4年8月2日 ペロシ米下院議長の訪台

米政府高官はこれまでの25年間、台湾を訪れていませんでした。

そのため、令和4年8月2日のペロシ米下院議長の訪台は重要な政治的イベントだったようです。

今回はその分析(素人目線)を書いてみたいと思います。

救国シンクタンク

国際情勢を分析するときに、関係する各国の思惑や立場をどれだけ理解しているかが最も大事だと思います。

その点において「救国シンクタンク」ではアメリカ側、チャイナ側の分析について専門家がおりますので、的確な解説がなされているように思います。

今回は、救国シンクタンク(2022年8月5日)オンライン研究会「ペロシ訪台をどう見るか?」で発信された内容をもとに記事を書いていきます。

ペロシ米下院議長の訪台に関する各国の動き

8月2日のペロシ訪台から1か月以上が経過していますが、色々と見えてきたところがありますね。

ペロシ訪台に関する主な出来事を時系列に並べてみる

7月28日 米中電話会談(バイデンと習近平)

8月1日 ホワイトハウスの発表「ペロシの勝手な訪問である」「一つの中国政策に変更はない」

8月2日 ペロシ米下院議長の訪台

8月4日 9発の弾道ミサイルを発射、そのうち5発が我が国の排他的経済水域(EEZ)内に落下

8月5日 岸田首相の発言「中国に対し強く非難し抗議をした」

8月8日 岸防衛大臣の発言「防衛省と自衛隊は7月29日から8月3日まで存立危機事態と認定した上で訓練」

8月10日 第2次岸田改造内閣の発足

8月26日 共和党のブラックバーン上院議員が台湾訪問

9月8日 ステファニー・マーフィー下院議員が率いる超党派の議員団が訪台し蔡総統と会談

アメリカの動き

まず、ポイントとなるのが、直前に行われた7月28日の米中電話会談と、8月1日のホワイトハウス発表です。

これは、明らかに事前に打ち合わせがされています。

アメリカからチャイナへ「ペロシの勝手な訪問である」「ひとつの中国政策に変更はない」この2点を両国間共通の認識としていることが伺えます。

「ひとつの中国」という建前を崩さないようチャイナに気を使っています。

それによって、互いに対立エスカレーションは回避しましょう、ということです。

一方、米軍はどうかというと、ウクライナへの軍事支援が優先されていて、台湾コミットは全く進んでいない。

米議会は左右の分断が加速していて、ホワイトハウス(バイデン政権)はペロシの勝手な行動と言っていて、米軍はウクライナへの軍事支援に注力している。

全くまとまっていない状態です。

なお、ペロシ訪台以降は、8月26日、9月8日、米政府高官による台湾訪問が常態化しています。

中国の動き

チャイナとしては、25年間ぶりの米政府高官による訪台は「軍事侵攻も辞さない」案件です。

しかし、現実はそうはなっていない。

チャイナ側としては「ひとつの中国」で米中の合意形成ができている、という前提を崩したくないわけです。

ただし、これまでの等価報復の原則として、台湾への経済制裁、ペロシ本人への経済制裁、そして、台湾海峡における実弾演習が行われました。

おまけとして、我が国の排他的経済水域(EEZ)内にミサイルが5発も落下しました。

台湾への軍事侵攻ではなく、経済制裁や、実弾演習にとどまっています。

チャイナ側の動きとしては、ブチ切れ案件のはずなのに、きちんと抑制が効いているな、という分析です。

台湾にとって

特にメリットはありません。

ペロシ下院議長の私的な訪問ですから、アメリカからの手見上げは特にありません。

ただし、米政府高官の訪問なので歓迎しないわけにもいきません。

終わってみれば、台湾はチャイナからの経済制裁を受けただけ、ということになります。

日本の対応

さて、翻って我が国の対応はどうでしたでしょうか。

NSCは開いたのか?

通常、このような政治的に重要なイベントが発生した場合、国家安全保障会議(NSC)が開かれるものです。

しかし、国家安全保障会議 開催状況を見る限り、開かれていません。

岸田内閣は何をしていたか?

チャイナから我が国のEEZにミサイルが落とされたわけですが、岸田内閣は、米中が戦略的コミュニケーションを一段階上げていっているにもかかわらず、何もしていません。

やったことと言えば、8月10日の第2次岸田改造内閣発足、つまり、人事です。

岸田内閣は、7月8日に安倍元総理が亡くなって、そこからさらに旧統一教会問題に発展し、清和会(安倍派)を潰す絶好の機会を得ました。

当初、9月前半と言われていた内閣改造は8月10日に発表されました。

岸信夫防衛相だけは・・・

岸信夫防衛相は、8月8日の記者会見で「防衛省と自衛隊は7月29日から8月3日まで、存立危機事態と認定した上で、武力行使を伴うシナリオ訓練に初めて参加した」と明らかにしました。

この頃の防衛省と自衛隊は大忙しだったそうです。

本当に頭が下がりますね。

感想

アメリカもグダグダなんですね。

もっとしっかりしてそうな感じでしたが意外です。

チャイナ側は逆にコントロールが効いているという。

台湾への上陸作戦を実施するほどの装備が整っていないので、現実的に軍事侵攻はできないと。

日本はまあ、、、残念ですね。

冷静に状況を分析しながら、いつか、私にもできることが・・・