アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄(江崎道朗)
アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄
私もつい最近までは、日本は戦前悪いことをしていた、と漠然と信じていました。
しかし、日本の保守派と言われる方々の言説や書籍に触れ、考え方が大きく変わってきました。
『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』の著者である江崎道朗氏は、私が尊敬する保守派の言論人のうちの一人です。
東京裁判史観
東京裁判史観とは、昭和21年(1946年)5月3日に始まった極東国際軍事裁判、いわゆる東京裁判において「日本は過去、侵略と植民地支配をした悪い国だ」とする歴史観です。
ルーズヴェルト史観
フランクリン・ルーズヴェルト大統領は歴代の大統領の中でも最も人気のある大統領の一人です。
ルーズヴェルト史観とは、ニューディール政策と第二次世界大戦への参戦によって、アメリカを大恐慌のどん底から復活させた素晴らしい大統領であるという歴史観です。
アメリカ近現代史の見直し
1995年「ヴェノナ文書」の公開により、ルーズヴェルト民主党政権内にソ連のスパイが入り込んでいたことが明らかになりました。
これを受けて、現在のアメリカでは近現代史の見直しが起こっている、と江崎氏は指摘します。
ルーズヴェルト大統領は本当に「ソ連のスパイ暗躍を許し、東欧とアジアを共産主義に明け渡した売国奴」なのか。
それでは、日米開戦の真実を "アメリカ側から" 見ていきましょう。
ニューディール連合
私の主観により、本書『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄(江崎道朗)』から印象に残った内容を書いていきたいと思います。
まずは、アメリカ保守派の最大の敵「ニューディール連合」です。
大恐慌、ハーバート・フーヴァー大統領
ことの経緯は大恐慌から始まります。1929年10月24日「暗黒の木曜日」の株価大暴落をきっかけに大恐慌が始まります。
時のハーバート・フーヴァー大統領(共和党)は経済政策で大失敗しました。
結果、アメリカ経済は急速に悪化します。
1933年の名目GDPは45%減少、株価は80%以上下落、工業生産は30%以上低落、1200万人が失業する事態に陥りました。
現在の社会では考えられないほどの大暴落ですね。
社会主義の時代
街中に失業者があふれ、人々は資本主義へ疑念を抱くようになります。
これからは新しい経済の仕組み、国家統制経済、つまり社会主義の時代だ、という風潮が一気に蔓延しました。
ルーズヴェルト民主党政権の誕生
これだけ経済をダメにしたら、共和党の支持率は下がります。
そして、1933年、圧倒的な支持を集めて大統領に就任したのが、民主党のフランクリン・ルーズヴェルトです。
ニューディール政策
ルーズヴェルト民主党政権はニューディール(new deal)と称して社会主義的な政策を次々と打ち出しました。
テネシー渓谷開発公社、民間植林治水隊、公共工事局、社会保障局、連邦住宅局などを設立し、大規模公共事業を実施するとともに、農産物価格維持政策によって農民に利益を保証し、労働者の権利を保護する政策によって、労働者の生活向上を支援しました。
ニューディール連合の誕生
ニューディール政策では、大規模な社会保障と公共事業を推進するため、連邦政府、特に官僚たちの力が飛躍的に高まりました。
また、労働組合も1933年の300万人から1941年の950万人へと膨れ上がりました。
これにより誕生した政治集団(リベラル派官僚、巨大労働組合、リベラル派マスコミなど)をニューディール連合と呼びます。
ニューディーラーの特長
ニューディール連合はこれまでの伝統的なキリスト教道徳よりも、社会主義的な価値観を重視し、リベラルに傾倒するようになりました。
労働組合はデモやストライキを繰り返し経営者に敵対的な態度を取り、ドイツや日本に対する経済制裁を訴えるようになりました。
アメリカの保守主義運動の始まりはニューディール連合への対抗
そして、ニューディーラーと称される社会主義者たちは戦後も、アメリカのマスコミ、労働組合、官僚たちを牛耳り、民主党を支持する選挙マシーンとして機能してきました。
これに対抗するため、アメリカの保守主義運動は始まりました。
現在のアメリカでも、新聞TVなどのマスコミ、アカデミズム、学会は左派リベラルに牛耳られています。
この戦いは今も続いているのです。
きっかけは、ヴィノナ文書
ヴェノナ文書(1995年公開)はソ連・コミンテルンのスパイたちの更新記録で、アメリカの国家安全保障局(NSA)が公表した立派な公文書です。
しかし、日米両国のマスコミ、アカデミズムはこれを隠蔽しようとしています。
なぜなら、彼らにとって都合が悪いことがあるからです。
ヴェノナ文書で判明したこと
第二次世界大戦中、ソ連・コミンテルンのスパイがアメリカに300人以上入り込んでいて、そのうち100名が実名を特定されるに至っています。
ソ連・コミンテルンは、ワシントンとニューヨークを中心として大規模なスパイ網を構築し、陸軍省、国務省、軍需生産委員会、経済戦争局、戦略情報局OSS(CIAの前身)、さらにはホワイトハウスへ諜報活動を行っていました。
ソ連の諜報活動が浸透しなかった政府機関は1つもなく、多くの機密情報が盗聴されていました。
ルーズヴェルト民主党政権に入り込んでいたスパイの実名
日本にも関わりのある政府高官の名前がずらりです。
カバーネーム | 本名 | 主な役職 |
---|---|---|
Jurist Ales | アルジャー・ヒス | 財務長官補佐官 |
Lawyer | ハリー・デクスター・ホワイト | 財務次官補 |
Prince | ローレンス・ダガン | 国務省南米課課長 |
Page | ラフリン・カリー | 大統領上級行政職補佐官 |
Perk | フランク・コー | 財務省通貨調査部部長 |
Saks | ソロモン・アドラー | 財務省通貨調査部 |
Koch | ダンカン・リー | 戦略情報局(OSS)日本・中国担当部門主任 |
こんな事をやってました。
- アルジャー・ヒスはヤルタ会談に大統領側近として参加
- ハリー・デクスター・ホワイトはハルノートの原案を作成
- ラフリン・カリーは真珠湾攻撃前に日本爆撃を画策
- ダンカン・リーは対日占領政策(東京裁判・神道弾圧・憲法改正・教育制度の改悪・国内対立の扇動など)の責任者
日米開戦のきっかけ作り、ソ連参戦の手引き、戦後の占領政策は彼らにより仕組まれた、と言っても過言ではないでしょう。
ルーズヴェルト、トルーマン民主党政権のヴェノナ作成妨害
1943年から始まったソ連の暗号通信の解読は困難を極めました。
技術的な課題もありましたが、もう1つは政治的な課題です。
当時のルーズヴェルト民主党政権、トルーマン民主党政権、国務省はヴェノナ作戦を妨害し続けました。
1956年FBIはヴェノナ文書の公開を見送る
アメリカのFBIは「ヴェノナ文書を引き続き非公開とする方針を堅持すべき」と結論しました。
アメリカは、国家の安全保障のために歴史の真実を隠蔽する国である、という冷徹な事実を我々は知るべきです。
アメリカも一枚岩ではない
これだけの情報が出てきたことで、アメリカでは近現代史の見直しが起きています。
共和党支持の、特に保守派のアメリカ人の多くは、大戦時のルーズヴェルト民主党政権を批判しています。
しかし、今もアメリカで歴代大統領の人気投票をすれば、ルーズヴェルト大統領は上位に入ります。
アメリカの中でも、ルーズヴェルト民主党政権のやってきたことに関して、意見が分かれています。
このことを知らない日本人は多いのではないでしょうか。
コミンテルン
そもそも、コミンテルンはどういう組織で何を目的としていたか。
そして、現代社会にどのような影響を与えているか。
ウラジミール・レーニンが創設
1919年、ロシア共産党のウラジミール・レーニン主導で創設された、共産主義政党による国際組織です。
1943年まで存在しました。
コミンテルンの目的
コミンテルンの目的は、世界を共産化することです。
共産主義とは、産党が政権を握り(一党独裁)、資本家を皆〇〇しにして、金持ちから財産を奪い取り、労働者に平等に分配すれば、労働者の楽園が実現できる、という危険思想です。
レーニンのすごいところ
共産党員を各地で増やせば、共産革命を起こせるとは思っていませんでした。
そこでウラジミール・レーニンの考えた手法が「敗戦革命」です。
資本主義国家の矛盾対立を煽って、複数の資本主義国家が戦争するよう仕向けるとともに、その戦争において自分の国を敗戦に追い込み、混乱に乗じて、武装した共産党と労働組合が政権を握る、という作戦です。
レーニンの狙いは日米戦争
ウラジミール・レーニンは1920年の12月6日のロシア共産党の演説でこう指摘しています。
二つの資本主義国家群のあいだの対立と矛盾を利用し、彼らをたがいにけしかけるべきだということである。(中略)
第一の、われわれにもっとも近い対立、それは、日本と米国の関係である。
第二次世界大戦が始まる20年も前から、レーニンはそれを狙っていたのです。
コミンテルンはそのために活動をしました。
スターリンの路線変更
「世界共産化」から「ソ連防衛」に力点を置くよう世界戦略を変更しました。
- 自由主義や資本主義者であろうとも、反ファシズム、反戦思想を持つ者は積極的に連携して取り込む。
- 当面の敵は日本とドイツで、アメリカやイギリスの資本主義国家とも協力する。
アメリカ共産党の方針転換
これを受けて、アメリカ共産党(コミンテルンのアメリカ支部)は以下の方針転換を行います。
- 共産化革命を一時背後に隠す。
- 日本、ドイツ、イタリアといったファシズム排撃をスローガンとする。
- 共産主義は最も進化している民主主義であると説明する。
アメリカ共産党は世論工作を重視し、マスコミへの工作は盛んに行われていました。
今でもアメリカのマスコミは左派に牛耳られています。
IPR(太平洋問題調査委員会)
アメリカ共産党はIPR(太平洋問題調査委員会)という機関も乗っ取りました。
IPRは、連邦議会に対するロビー活動を理論的に支え、ルーズヴェルト民主党政権を対日圧迫外交政策へと導きました。
GHQの日本占領政策
1940年に『日本における近代国家の成立』、1943年に『日本における兵士の農民』という報告書がIPRから発行されています。
これらを書いたのがハーバート・ノーマンで、共産党のフロント組織「カナダ中国人民友の会」書記をしていた人物です。
この中でノーマンが主張した内容がGHQ日本占領政策の論理的根拠となっています。
どんなものかと言うと、以下のようなものです
日本は軍国主義国家で、中国大陸での紛争の責任は日本の軍国主義にある。
戦争に勝利するだけでは不足だ。日本の国家体制を容赦なく解体し、アジアの人々や日本人民を開放する責務がアメリカにはある。
読んでいて怖くなりましたが、東京裁判史観そのものですね。
コミンテルンだけが日米戦争の要因ではない
おわりに、江崎氏は「コミンテルンだけが日米戦争の要因であると主張するつもりはない」と述べています。
ただ、少なくとも日本だけが悪いとする東京裁判史観は既に破綻しているという指摘については、私も賛同します。
日本人は反省できていない
多くの日本人はなぜ戦争したのか、日本はなぜ負けたのか、その認識が間違っています。
まずは、歴史を見直すことが第一歩だと考えます。
そして、本当の歴史を学び反省することで、次の一歩を踏み出せるのではないか、と私は考えます。
それにしても、最初の一歩が遠すぎる、と思う今日この頃です。