ハイブリッド戦争の時代(志田淳二郎)

ウクライナ危機(ロシアによるクリミア併合)

『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、

ロシアによるクリミアの併合(ロシアによるクリミアのへいごう)は、国際的にウクライナの領土と見なされているクリミア半島を構成するクリミア自治共和国・セヴァストポリ特別市をロシア連邦の領土に加えるもので、2014年3月18日にロシア、クリミア、セヴァストポリの3者が調印した条約に基づき実行された。

この内容を読むと「3者が調印した条約に基づき実行された」と解釈してしまいがちですが、現実は大きく異なります。

ハイブリッド戦争の時代

これはロシアがウクライナへ仕掛けたハイブリッド戦争の結果、ロシアがクリミアを奪い取ったという文脈で語られるべきものです。

本書『ハイブリッド戦争の時代(志田淳二郎)』では、ロシアが仕掛けた様々な工作の内容や、戦争が軍事領域から民間領域へと、境界が曖昧になってきている事が指摘されています。

世はまさに、ハイブリッド戦争(Hybrid War)の時代です。

現代を生きる我々は、これから敵国が何を仕掛けてくるのか、知らなければ対処もできません。

本書『ハイブリッド戦争の時代(志田淳二郎)』は、その入門書です。

ハイブリッド戦争とは

欧米の安全保障専門家は「意図的に民間と軍事目的の境界をあいまいにする武力紛争未満の取り組み」を、ハイブリッド戦争(Hybrid War)と呼んでいます。

グレーゾーン

「有事」と「平時」の間にあるのが「グレーゾーン」と呼ばれます。

日本の『防衛白書(令和2年版)』ではこのように書かれています。

いわゆる「グレーゾーンの事態」とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものです。
例えば、国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題にかかわる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張・要求の受け入れを強要しようとする行為が行われる状況をいいます。
いわゆる「ハイブリッド戦」は、軍事と非軍事の境界を意図的に曖昧にした現状変更の手法であり、このような手法は、相手方に軍事面にとどまらない複雑な対応を強いることになります。
例えば、国籍を隠した不明部隊を用いた作戦、サイバー攻撃による通信・重要インフラの妨害、インターネットやメディアを通じた偽情報の流布などによる影響工作を複合的に用いた手法が、「ハイブリッド戦」に該当すると考えています。このような手法は、外形上、「武力の行使」と明確には認定しがたい手段をとることにより、軍の初動対応を遅らせるなど相手方の対応を困難なものにするとともに、自国の関与を否定するねらいがあるとの指摘もあります。
顕在化する国家間の競争の一環として、「ハイブリッド戦」を含む多様な手段により、グレーゾーン事態が長期にわたり継続する傾向にあります。

ハイブリッド戦争の舞台は「平時」から

そして、筆者はハイブリッド戦争は「平時」も含むと書いています。

例えば、SNSを利用した世論工作は「平時」においても実行されていますね。

アメリカの2021年大統領選では、まさにSNSでの世論工作が盛んに行われ、多くのデマが流布され、影響を受けた人がたくさんいました。

アメリカを分断しようというハイブリッド戦争ですね。

国民が大きく分断され、社会が混乱すればするほど、敵国(中国やロシア)にとっては有利となります。

ハイブリッド戦争のターゲットは民主主義そのもの

ハイブリッド戦争のターゲットはアメリカ、EU、そして日本のような民主主義国家です。

なぜなら、ヒト・モノ・カネ・情報が一元的に管理されている国家よりも、それらが自由な「開かれた社会」である民主主義国家の方が影響を与えやすいからです。

ハイブリッド戦争への対応は?

ハイブリッド戦争へ、どう対処すれば良いか

これが一筋縄でいかないと、筆者は鋭く指摘しています

なぜなら、1945年の国連憲章が想定していない紛争形態であるからです。

「リトル・グリーン・メン」のような非国家主体的な存在に対して、自衛権が発動できるか、法的に断定できないのが現状です。

世界は、ハイブリッド戦争に対して、このような法的課題も抱えているのです。

プーチンの言葉

ロシアがウクライナへ仕掛けた事は、明確な侵略行為だと私は思います。

しかしながら、プーチンはこのように語りました。

「歴史を振り返ったときに、一発の弾丸が発射さえることもなく、一人の犠牲者も出さずに行われた介入の唯一の事例を、わたしは思い出すことができません」

同じようなことを中国の国家主席に言われぬよう、日本は備えなければいけません。